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振り向いても未来

楽しいものに吸い寄せられる性質です

糸を紡ぐということ~刺繍懸装幕展にて~

4月の頭に京都文化博物館で行われていた「刺繍懸装幕展~未生以前の魂に戻る~」にお邪魔しました。そもそもの私の勉強不足はあるので、全く「京繍」「刺繍」の世界に触れてこなかった人の素直な感想だと思って読み流してください。とにかく圧倒されたので書き残しておきたかっただけなのです。

 

当たり前すぎて忘れがちなことにまず言及しておきます。

「布って細い糸を編んで作られたもの」なんです。

どうでしょう。当たり前でしょう。ですが実際に作品を目の当たりにすると確実に圧倒されます。

 

素直に、無邪気に感想を述べると「これが布?これが糸?」です。

まるで絵画なんです。ほとんど絵画なんです。

これが糸だと思うと恐ろしいと感じるほどに絵画なんです。

 

これらの作品を作られた方から直接様々な制作秘話を伺うことができました。

一対の作品は制作に30年の月日がかけられていたこと、既製の布は一切使わずに全て手縫いの細い糸で作られていること、作品のモチーフに中国の古典が使われていること、伊勢神宮への参拝が影響していること等々。製作者の様々な経験や思いがひとつの作品に糸と同じように紡がれていたのです。

 

そして製作者の方は重ね重ね「周りの方々の縁に恵まれて…」と仰っていました。聞くと幕以外の細かな装飾部分それぞれに別の方々の力添えがあり、そしてこの展覧会の開催も様々な方々の尽力があったとのことでした。

 

彼は糸を紡ぎながら、様々な経験を紡ぎながら、様々な方々と作品を紡いでいたのです。

30年かけて糸とともに織り込んできた圧倒的な作品の迫力は、素直に身震いするほどでした。

「コインロッカーベイビーズ」と母と娘の話

それはそれは軽率に足を踏み入れた舞台だった。

2016年の夏、友人を送り届けて帰ろうと思っていた。「コインロッカーベイビーズ」前知識ゼロ。出演者も友人を連れて劇場に向かう道中で知る。

 

それにしてもヘビーだった。

暑苦しいほど毒々しかった。

息苦しいほど痛々しかった。

そしてとてつもなく文学的で観劇後の胸のもたつきがあった。

 

パンフレットを買い、この作品をとにかく読み解きたかった。自分の中で飲みくだしたかった。噛み砕いてすっきりしたかった。原作があることを知り、本屋をはしごしてようやく手にした。読み始めたものの、これまたヘビーだった。なかなか進まず、途中休憩を挟みまくりながら読み切るまで半年かかった。舞台のワンシーンワンシーンを再度目撃しながら飲みくだして…の半年だった。

 

帰省の時に読みきろうと黙々と読書していた私に「何をそんなにかじりついているの?」と母は尋ねた。母は「まー!懐かしい!私も10代の頃買って読んだわ」と嬉々として話し出した。

 

学校で村上龍作品を読んでいたところ、内容が過激すぎると担任に取り上げられた「限りなく透明に近いブルー」のエピソードや、まさか彼が「13歳のハローワーク」のような本を書くとは思わなかったという話がそれはそれは花が咲いた。母が多感な頃にその時代を彩っていた作家の作品を、まさにその娘が多感な頃に手にしている。なんとも不思議な巡り合わせだった。

 

長いことアイドルの、殊更ジャニーズのファンをしていると、各方面から「アイドル舞台の?」「ジャニーズ舞台の?」と少し小馬鹿にされることがある。それは一概に否定もできなくて、正直ファンであっても小馬鹿にしたくなるものは多々ある。けれどそれはアイドルだからとかジャニーズだからと括る類のものではない。

 

今回の軽率に観劇した舞台から原作への作品の広がり、そして母と娘が世代を超えてそれぞれが手にしていたという広がり。その一連のきっかけが俗に言う「アイドル舞台」「ジャニーズ舞台」だったという事実が確かにある。文学や文化の間口は広い方がいい。高尚な世界ほど入口は覗きやすい方がいい。興味を持てた方がいい。頭では分かっていたがそれを肌で感じた一件だった。

 

きっかけはなんだっていいじゃない。良いものには多く触れられた方がいいじゃないか。それくらいのスタンスでこれからもきっと軽率に面白い世界を探して歩いて行きたいと思います。

ムーミン絵本の世界展【大丸京都店】

2017/3/20

お邪魔してまいりました。

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入口からムーミンスノークのお嬢さんのお出迎えでムーミンの世界が始まります。最近の展覧会や美術展はフォトスポットが楽しい。繁忙期はシャッター要員のスタッフさんが居たら楽しいよね。できたら一緒に座れたらいいよね。フォトジェニックだよね。

 

壁面のカラーもトーベヤンソン独特の色彩を用いたカラフルなもので、ところどころキャラクターたちが描かれていて絵本の中の展覧会のよう。壁面のキャラクターたちが全部子供たちの目線なので、子供たちが嬉々として辿っていたのが愛らしかったです。どうしても原画は大人の目線になってしまうもんね。もちろん大人もわくわくする内容です。

 

ムーミンシリーズのなかでも特に絵本に特化した展覧会なので、実際に筆をとっているのはカーラ夫妻なのですが、適度なポップさもあって子供も楽しめる展覧会です。もちろん大人も「この絵本見たことある!」と懐かしくなります。

そういえば小さい頃は絵本じゃなくてコミックスのムーミンが読んでみたくて、お母さんの留守中にお母さんの本棚から拝借してドキドキした気持ちを思い出しました。当時はコミックスのムーミンシリーズの哲学性なんて微塵もわからなかったのですが、なんだかコミックスのムーミンは大人の読むものっていう認識があったんですよね。白黒なのが余計少し怪しげな雰囲気のあるムーミンシリーズの世界観を助長させるといいますか。

 

世代を超えて愛されるものって世界中に数多くあると思うのですが、共通点って「どの媒体に姿を変えても中身がある」っていうことだと思います。幼い頃はアニメ、字が分かるようになって絵本、そして大人になってからはコミックス。そして足を伸ばして展覧会もいいなぁなんて思った休日でした。

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4/3まで開催ということなのでお近くに寄られた際にはぜひ。作品自体は30分ほどで見られるボリュームかなと思います。物販も充実しておりますのでそちら目的の方も損はないかと思います♡