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振り向いても未来

楽しいものに吸い寄せられる性質です

糸を紡ぐということ~刺繍懸装幕展にて~

4月の頭に京都文化博物館で行われていた「刺繍懸装幕展~未生以前の魂に戻る~」にお邪魔しました。そもそもの私の勉強不足はあるので、全く「京繍」「刺繍」の世界に触れてこなかった人の素直な感想だと思って読み流してください。とにかく圧倒されたので書き残しておきたかっただけなのです。

 

当たり前すぎて忘れがちなことにまず言及しておきます。

「布って細い糸を編んで作られたもの」なんです。

どうでしょう。当たり前でしょう。ですが実際に作品を目の当たりにすると確実に圧倒されます。

 

素直に、無邪気に感想を述べると「これが布?これが糸?」です。

まるで絵画なんです。ほとんど絵画なんです。

これが糸だと思うと恐ろしいと感じるほどに絵画なんです。

 

これらの作品を作られた方から直接様々な制作秘話を伺うことができました。

一対の作品は制作に30年の月日がかけられていたこと、既製の布は一切使わずに全て手縫いの細い糸で作られていること、作品のモチーフに中国の古典が使われていること、伊勢神宮への参拝が影響していること等々。製作者の様々な経験や思いがひとつの作品に糸と同じように紡がれていたのです。

 

そして製作者の方は重ね重ね「周りの方々の縁に恵まれて…」と仰っていました。聞くと幕以外の細かな装飾部分それぞれに別の方々の力添えがあり、そしてこの展覧会の開催も様々な方々の尽力があったとのことでした。

 

彼は糸を紡ぎながら、様々な経験を紡ぎながら、様々な方々と作品を紡いでいたのです。

30年かけて糸とともに織り込んできた圧倒的な作品の迫力は、素直に身震いするほどでした。